*06.本当のところ。

あ、今日入学式なんだ。

近くの高校の校門に、○○高等学校入学式と書かれた看板が、
立てかけられていた。
そして、母親に連れられて、歩く新一年生であろう子どもたちが、
──もう子どもじゃないと、あの頃は思っていた──
学校へ吸い込まれていく。

ああ、僕にとって、城だと思い込んでいた場所は、
牢獄だったのだ。
窓の外に咲く桜は、僕の心の内など何も知らず、
立派に咲き誇っていたのだ。

今、その桜の樹を、見て見ぬふりをしていた桜の樹を成敗してやろう。
そう刃を向けたとき、自ら散っていったのだ。
己の短き命知っており、
本当は僕のことを見守ってくれていたのだ。

そう想いながら、申し訳なく、桜の絨毯の上を歩くのだ。


(写真:2号/言葉:1号)




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